復活の主日・日中のミサ説教

復活の主日・日中のミサ説教

上にあるものを見る
コロサイの教会への手紙 3:1-4

 「上にあるものに心を留め、地上のものに心を引かれないようにしなさい」とパウロは言います。古い自分を十字架にかけ、キリストと共に死んだのなら、もう地上のことばかり考えていてはいけない。いつも目を天に向けていなさいということです。

 いま新型コロナウィルスの感染拡大に直面しているわたしたちにとって、この言葉はとても大切だと思います。ウィルスへの恐怖に取りつかれると、地上のことばかりを見てしまいがちだからです。いまこそ、わたしたちは天に目を向ける必要があります。天を見上げれば、わたしたちがいま「神の子」として何をすべきかが示されるでしょう。確かに、自分の身を守るのは大切なことですが、わたしたちには他にもすべきことがあります。天におられる神の前で、わたしたちには、互いに愛し合う使命が与えられているのです。

 たとえば、誰かが感染の拡大に怯え、不安に陥って取り乱しているとき、自分まで取り乱していてはどうにもなりません。わたしたちの使命は、取り乱しているその人を、しっかり支えてあげることなのです。神さまが一緒にいてくださるのだから、恐れる必要はない。自分たちにできる限りのことをして、あとは神様の手に委ねよう。万が一、病気になったとしても、神様がわたしたちを見捨てることは絶対にないし、わたしもあなたを見捨てない。そう言って、その人の不安を取り除いてあげること。神様の愛の目に見えるしるしとなって寄り添うことこそが、わたしたちの使命なのです。

 あるいは、誰かが病気に感染したとき、その人を怖がったり、責めたりすれば、それは天におられる神さまの思いにまったく反することでしょう。神さまは、その人の苦しみに寄り添うこと、物理的には不可能だったとしても、その人の心にしっかり寄り添うことを望んでおられます。天に目を向ければそのことは明らかでしょう。神さまは、わたしたちが互いを恐れ、非難し合うことではなく、愛し合うことを望んでおられるのです。

 今こそ、わたしたちの信仰が試されていると言ってもいいかもしれません。普段、「すべて神様の手にお委ねします」と言っていても、いざ自分の命に関わることが起こると取り乱し、自分のことしか考えられなくなってしまう。それが人間の弱さです。イエスを裏切って逃げた弟子たちにもその弱さがありましたし、わたしたちにも同じ弱さがあります。いま何より大切なのは、神を信じ、恐れを振り払うことです。新型コロナウィルスの嵐に翻弄される小舟に乗っているような気持ちになっても、何も恐れる必要はありません。わたしたちには、死者でさえ墓の中からよみがえらせる神様がついておられるからです。

 警戒するのはよいことですが、恐れるのは危険です。恐れは、わたしたちの心を弱らせ、力を奪ってゆくからです。体が病気にやられる前に、恐れがわたしたちの心を壊してしまう可能性さえあります。心が壊れ、皆が自分のことしか考えられなくなれば、ウィルスは簡単に人間社会に侵入し、すべてを破壊してしまうでしょう。食料や衣料品を奪い合う暴動、戦乱が起こり、社会が機能しなくなれば、健康な人が感染した人たちを差別し、わたしたちの間に分裂や争いが起これば、そのときこそウィルスが完全な勝利を収めるときなのです。

 すべての恐れを振り払う信仰こそ、ウィルスと戦うための最大の武器だと言っていいでしょう。いまこそ顔を天に向け、「神の子」としての使命を思い出しましょう。復活の信仰に支えられ、互いを支え合うことによって、この試練を乗り越えることができますように。

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